叔父に(3年ほど前に)お勧めされたSF小説リストが読み終わったので、特別お題に合わせて振り返ろうかと。ネタバレ込みの感想になるので、未読の方は悪しからず。
特に面白かった10冊
1.BEATLESS 長谷敏司
甲乙つけがたい作品が多いが、あえて1位を選ぶなら?と言われたらこの作品を選ぶ。研究所から逃げ出した5人の超高度AIと、出会った少年たちのお話。まぁボーイミーツガールな作品ではあるけど、超科学を操るロボットの女の子って最高じゃないか。それが5人で争ってる? 先を読むのが楽しみで仕方がなかった。上巻ではアラトの告白とそれに対するレイシアの答え、後半ではアラトが気持ちを打ち明け、レイシアが帰ってくるシーンが特に好き。こう書くと、自分がただの恋愛シーン好きだったのかと疑ってしまう。それほどに好き。これを書いたらどっぷりと考察を読んでいきたい。
結末もハッピーエンドで終わってるので、とりあえずAIの女の子が出てくる話が好きならオススメ。
好きな言葉
(下巻)P381 lラスト
世界を敵に回しても釣り合う"未来"を、彼女は見つけたのよ。世界一賢い女が、身を捨てて上がった舞台になんかに手を出したら、あなた、鉄くずじゃ済まないわよ
相手を理解している感じのセリフで好き。クールな女の最高の舞台。これからクライマックスだ!と言うワクワク感が止まらなかった。
2.老人と宇宙 ジョン・スコルジー
今のところ読んだ海外SFの中で一番好き。75歳を超えたおじいちゃんが第三の生を生きるお話。
読んでいると、人間はやっぱりひ弱で小さな存在であるんだと思い知らされる。同じく宇宙生命体と対峙するクトゥルフをプレイするときにこういう感情は役立ちそうなので、クトゥルフプレイヤーはぜひ読むべき。オイボレ団の絆とそれに対する戦争のむごさが際立ってて、悲しい気持ちが引き立つところがとても良い。後半の活躍ストーリーは前半の悲しさを吹き飛ばす勢いなので、かなりの気持ちよさを味わえて楽しい。途中までエイリアンの強さを歯がゆく感じるだけに、なおさらスカッとする。途中のオイボレ団が順番に死んでいく死に様シーンも印象に残って、ストーリーを強く覚えている作品だった。
好きな言葉が何もメモされてないが、面白かったとは断言できる。最初の裏面を見た際に「おじいちゃん?」と疑問符を浮かべながら読み始めたから、落差で猶更面白いと感じたのかもしれない。
3.エンダーの冒険 オースン・スコット・カード
異星人による地球の危機を救うために選ばれた少年エンダーの成長物語。
世界観の説明となる上巻パートも面白いが、自分が好きなのは下巻のドラゴン隊の快進撃が描かれるシーン。上巻で不安な引きをしていた気がするが、下巻で頼れる上官になっていたのでこんな成長したのエンダー!? とかなり驚いた。自分が部屋にいると全員が緊張するから、普段は上官室にいるというのは確かに納得できる。全体では厳しく指導しつつ、個人それぞれにはしっかり褒めていくというのは素晴らしい上官。私もついて行きたいです!
仲間と協力しつつ敵を突破する最後まで面白い本でした。続きである死者の代弁者も好き。
好きな言葉
(下巻)P37 l6
最高の指揮官は、何か足を運ぶ理由がない限り、営舎には近づかないものだと、とっくの昔に学んでいたからだ。
会社とかでも当てはまるのかなぁと思いつつ書いた言葉。エンダーの観察力を尊敬する。
4.All You Need Is Kill 桜坂洋
とある理由で同じ一日を繰り返すようになった少年が成長していく物語。
映画化され、漫画化されて言わずと知れた作品だと思われる。
新兵だったキリヤが成長して、戦場の女神と行動し、最後に戦うという流れまですべて好き。テンポよく状況が変わる様子が面白い。最初は巻き戻るようになっても戦場から逃げていたのに、いつしかベッドから出る行動も最適化されるようになるとは。
ジャパンのグリーンティーでリタが泣いてしまうくだりは一言に凝縮されていて素晴らしい。そりゃ泣いちゃうよね。
キリヤ少年が成長するまで愚直に訓練と実践を繰り返したとことがとても印象に残っている。結局成長するためにはその二つを交互に行うのが早く、最も成長できるのかもしれない。実践できてるかと言われるとちょっと疑問符はつくけど、それでも覚えておきたいことだと感じている。
好きな言葉
ページ書き忘れた
訓練で叩き込むのは最低限の技術だ。右も左も分からねぇヒヨッコどもが、クソッタレな戦場で赤信号を渡っちまわねぇようにするためにルールって奴よ。生き残った運のいい野郎が、実践から何かを学んで兵士になっていく。
訓練を付けてくれる伍長さんのセリフ。これが実践と訓練かと感じた。
5.夏への扉 ロバート・A・ハインライン
こちらも言わずと知れた名作。寝る前に読み始めたら、面白すぎてそのまま3時間経ってた。とても読みやすくて面白かった。ありがとう訳者さん。
前半の舞台の変わり目から、怒涛の後半、最後の幸せENDまで素晴らしい。解説にもあるように、時間旅行と言うネタが新しいわけではないけど、それに対応していく主人人口の活躍を楽しく読ませてもらった。
ダンのように、組み合わせるトレーニングはしても面白いかもしれないと思った。
そして感じたのは知識の重要性。やっぱり勉強って大事だ。
好きな言葉
P306 l6
僕らの友情は、リッキィの6つのときから、こうしたお互いの個性と尊厳とを認め合うデリカシィの上に培われていたのである。
対等に互いを認めあういい関係で好き。子供だからって扱いを変えることなく、しっかりと向き合っている点を尊敬する。
6.たんぽぽ娘 ロバート・F・ヤング
ボーイミーツガールを集めた短編。何よりも表題作が好き!! ある山で会った二人が結婚して今の夫婦になっていたという展開が…! 主人公も驚いていたが、お嬢さんよく飛んだな。ネタが夏への扉の逆になってるので、向こうが好きならこの作品も好きになるのは必然だったのかもしれない。読みやすく、楽しい作品でした。短編がちょこちょこというのもいい形ですね。気軽に読み始められる。
好きな言葉
p190 l10
常識は第一級の嘘つきよ。(中略) ジョルダーノ・ブルーノの火刑の発端になったのも常識。
常識は疑うもの。時代によって移り変わるよねと感じた。
でも疑うのが難しい…。
7.南極点のピアピア動画 野尻抱介
あんな高度知性体が初音ミクのような形をしてたら好きになるでしょ!!
これはBEATLESSと同じで、超高度なAIに私が憧れてるから好き。
メモには思い付きをノリとテンションで駆け抜ける感じが素晴らしいと書いてある。
同じ作者のふわふわの泉も好き。
8.know 野崎まど
幼いころ尊敬している先生に出会った男の子が、成長して先生を失いつつ出会った女の子と旅する話。
読みやすく流れが面白かったというのもあるが、好きなのは「情報」の扱いが面白かったところ。途中のハッキング勝負や、「死は情報のブラックホール化である」と言う言葉がすごく記憶に残っている。
知ルと対照で現れた有主照さんの生き方、「この道では自分は到達できない」と感じたから経営者になって開発させたというのがすごく共感しているところ。
9.ガニメデの優しい巨人 ジェイムズ・P・ホーガン
「星を継ぐもの」に続いての作品。ガニメアンの進化が納得できる流れになっていて、とてもSFっぽさを感じた。前回解けたと思われた謎がまた謎になり、最後にダンチェッカーが紐解いていく展開はとても好き。数段構えの展開を楽しんだ。こういうシナリオは書いてみたい。
話も好きだが、一番刺さったのはゾラックと言うスーパーコンピュータ。"テクノロジーの使い手のよき友"という雰囲気が大好きだった。
好きな言葉
p191 l書き忘れ
ゾラックはいつしか彼にとって、案内人と教師と相談役、それに茶飲み友だちを兼ねる存在になっていた。常にそばにいて決して裏切られることのない親友であった。
最高の人工知能。こういう人工知能が欲しい!と言う気持ちを言語化してくれた文章だった。
10.人間以上 シオドア・スタージョン
てっきり集まった5人が力を合わせて世界征服をするのかと思ったらかなり違った。生まれたばかりの新人類が成長していく過程を楽しんだ作品。二章を軸に作品が出来た書いてある通り、かなり2章は面白かった。現在と過去を行ったり来たりする展開が面白く感じた。
訳も自分にあったのか、ぐいぐい読み進めたので楽しい作品だった。
好きな言葉
p152 l2
でもそのことは、僕らが仲間同士であることを妨げはしなかった。(中略)その言葉は、だれもがたとえ別々のことをしていても、みんながあることに対して、一緒になっていることを意味するのだと彼女は言った。
何故メモしたのかは覚えてないが、こういう"仲間"という概念が私は好きだし大切だと思ったのでこの言葉をメモしたのだろう。
感想
若いうちにSFは読んでおいた方がいいと言われてお勧めされたリストだったが、確かにそう感じた。現代の作品でもこれらの作品をリスペクトしたのはあるだろうし、今のうちに味わうことが出来てよかった。これらの本を読んだのは20代だが、30、40になったらどう感想が変わるのか楽しみである。
大学に入って最初に読んだ本が「読書は一冊のノートにまとめなさい」と言う本だった。素直にノートを一冊つくってメモしていくようにしたが、今回のまとめを書くにあたってここまで役に立つとは思ってなかった。なんで好きな言葉を書いてないんだ!と過去の自分に当たったりはしたが、それでも当時の記憶を思い出すのに役立った。これからも忘れず書きたいとは思う。字が汚くて読むのに苦労するのが難点。
SFと言う分野の積読リストが消化できたので、また別分野にも手を出したい。とりあえず次は三国志か、十角館の殺人か、実力も運のうちかな
読んだ本
日本SF
- Beatless
- 家族八景
- 虐殺器官
- ハーモニー
- All you need is kill
- 南極点のぴあぴあ動画
- 新世界より
- know
- あなたのための物語
- My humanity
- ようこそ地球さん
- 時砂の王
- 象られた力
- 不確定世界の探偵物語
海外SF
- アンドロイドは電気羊の夢を見るか?
- 一九八四年
- 華氏451度
- 流星航路
- 火星の人
- われはロボット
- 夏への扉
- 月は無慈悲な僕の女王
- 愛はさだめ、さだめは死
- 鋼鉄都市
- タイタンの妖女
- たったひとつの冴えたやりかた
- 虎よ、虎よ!
- ハローサマー、グッドバイ
- 幼年期の終わり
- エンダーのゲーム
- 死者の代弁者
- 老人と宇宙
- 宇宙のランデブー
- 渚にて 人類最後の日
- ガニメデの優しい巨人
- 星を継ぐもの
- オルタードカーボン
- 銀河ヒッチハイクガイド
- 人間以上
- ハイペリオン
- たんぽぽ娘
- 2001年宇宙の旅
- 闇の左手
- 地球の長い午後
- 所有せざる人々
- ニューロマンサー
- 順列都市
- あなたの人生の物語
- 海底二万里
- 天の光はすべて星